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妊娠中の自宅の増改築と生まれた子どもの生後1歳までの喘鳴(ぜんめい)・反復性喘鳴の発症頻度との関連

2021年6月11日

兵庫医科大学(兵庫県西宮市、学長:野口 光一)の小児科学およびエコチル調査兵庫ユニットセンターらの研究チームは、子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、「エコチル調査」)の約7万5千人のデータをもとに、妊娠中の新築・改築と生まれた子どもの乳児期の喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューする呼吸)発症の関係について解析しました。

その結果、妊娠中に自宅の増改築を行った妊婦から生まれた子どもは、しなかった妊婦から生まれた子どもに比べて生後1歳までの喘鳴・反復性喘鳴の発症頻度が高いことが明らかとなりました。一方で、妊娠中に自宅を新築した家庭としなかった家庭では、生まれた子どもの生後1歳までの喘鳴の発症頻度に差がみられませんでした。

本研究は、妊娠中の自宅の新築・増改築と生まれた子どもの喘鳴との関連について検討した、大規模な出生コホート調査です。この結果により、新生児・乳児期の喘鳴発症の機序の解明や予防につながることが期待されます。

なお、本研究の限界としては、増改築の種類や程度、喘鳴の重症度は明らかでないこと、妊娠中の増改築と生まれた子どもの乳児期の喘鳴との関連の機序が不明であることなどがあげられます。


※ 本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。





本研究成果は、2021年5月29日にアレルギー分野の学術誌「Allergology International」に掲載されました。

【論文掲載情報】

  • 掲載雑誌
    Allergology International」 DOI: 10.1016/j.alit.2021.05.003

  • 論文タイトル
  • 「Association between house renovation during pregnancy and wheezing in the first year of life: The Japan Environment and Children’s Study」
  • 著者
    Tetsuro Fujino, Hideki Hasunuma※2,3, Masumi Okuda※1, Midori Saito※1, Takeshi Utsunomiya※1, Yohei Taniguchi※1, Naoko Taniguchi※1,3, Masayuki Shima※2,3, Yasuhiro Takeshima※1,3, the Japan Environment and Children’s Study Group※4

    ※1 藤野 哲朗、奥田 真珠美、齋藤 碧、宇都宮 剛、谷口 洋平、谷口 直子、竹島 泰弘:兵庫医科大学 小児科学教室
    ※2 蓮沼 英樹、島 正之:兵庫医科大学 公衆衛生学教室
    ※3 蓮沼 英樹、谷口 直子、島 正之、竹島 泰弘:エコチル調査 兵庫ユニットセンター
    ※4JECSグループ:コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンター長

発表のポイント

  • 妊娠中に自宅の増改築を行った妊婦から生まれた子どもでは、1歳までの喘鳴と反復性喘鳴の発症頻度の上昇が認められました。
  • 一方で、妊娠中に自宅を新築した妊婦から生まれた子どもでは、1歳までの喘鳴と反復性喘鳴の発症頻度の上昇はみられませんでした。
  • 妊婦をアレルギー疾患の既往がある群とない群に分けた検討では、どちらの群においても妊娠中に自宅の増改築を行った妊婦から生まれた子どもは1歳までの喘鳴の発症頻度が高くなっていました。
  • 生まれた子どもを1歳までに呼吸器感染症に罹患した群と罹患しなかった群に分けた検討でも、どちらの群でも妊娠中に自宅の増改築を行った妊婦から生まれた子どもは1歳までの喘鳴の頻度が高くなっていました。

研究の背景

「エコチル調査」は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、2010年度より全国で10万組の親子を対象として開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査です。母体血や臍帯血、母乳等の生体試料を採取保存・分析するとともに追跡調査を行い、子どもの健康に影響を与える環境要因を明らかにすることとしています。


エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施しています。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施しています。


<当研究の背景>
乳幼児は年長児に比べて解剖学的な特徴などから、気道が狭くなりやすく、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューする呼吸)が起こりやすいとされています。また、喘息の約80~90%は6歳までに発症しており、小児喘息の発症において乳児期の喘鳴の管理が重要と考えられています。乳幼児喘鳴、喘息の原因としてはウイルス感染、受動喫煙、ハウスダストやダニなどの吸入抗原や、家族歴、性別、アレルギー素因などの個体因子も発症リスクと関連していることがこれまでに報告されています。


加えて、妊娠中の喫煙が生まれた子どもの喘息発症を増加させることや、妊娠中の農村での居住が喘息の発症を減少させることが報告されており、妊娠中の環境因子が生まれた子どもの喘息発症に関連していることがこれまでに知られています。しかしながら、様々な環境因子に対しての検討は十分とはいえない状況です。今回、我々は、妊娠中の新築や増改築と生まれた子どもの喘鳴との関連について検討を行いました。


研究内容と成果

本研究ではエコチル調査に登録された妊婦の妊娠中期、生まれた子どもの生後1カ月及び1歳の時に実施された両親に対する約10万人のデータのうち自記入式質問票に有効な回答があった7万5,731名に対して、妊娠中に新築・増改築を行った妊婦と生まれた子どもの生後1歳での喘鳴と反復性喘鳴の関連についてそれぞれ検討を行いました。


妊婦の喫煙歴・アレルギー疾患の既往・社会経済背景、生まれた子どもの性別・アレルギー疾患の既往・呼吸器感染の既往などを共変量※1としてロジスティック回帰分析※2を用いて統計解析をしました。さらに、これまでに子どもの喘鳴、喘息のリスク因子として知られている、妊婦のアレルギー疾患の既往、生まれた子どもの呼吸器感染症の既往の有無で層別化し、追加で解析を行いました。


自宅の増改築について、データの不備等を除き、最終的に7万4,968名の妊婦が検討の対象となり、生まれた子どもの喘鳴の有症率は、妊娠中に増改築した妊婦から生まれた子どもでは23.3% (545/2,341名)、しなかった妊婦から生まれた子どもでは19.3% (1万3,996/7万2,627名)でした。ロジスティック回帰分析では、妊娠中に増改築をした妊婦から生まれた子どもでは、しなかった妊婦から生まれた子どもに比べて生後1歳までの喘鳴の頻度が1.33倍、反復性喘鳴(本研究では4回以上の繰り返す喘鳴エピソードを「反復性喘鳴」と定義)の頻度が1.22倍となっていました。

図1 妊娠中の増改築・新築と出生した子どもの1歳までの喘鳴・反復性喘鳴の関係

一方、妊娠中に自宅を新築した妊婦と生まれた子どもの喘鳴の発症頻度との関係は明らかではありませんでした。妊婦のアレルギー疾患の既往の有無で層別化した解析では、妊婦のアレルギー疾患の既往の有無に関わらず、妊娠中に増改築を行った妊婦の群は、増改築をしなかった妊婦の群に比べて生まれた子どもの喘鳴のリスクが上昇していました(アレルギー疾患の既往あり群1.25倍、アレルギー疾患の既往なし群1.44倍)。生まれた子どもの呼吸器感染症の既往歴の有無で層別化した解析では、生まれた子どもの呼吸器感染既往の有無に関わらず妊娠中に増改築を行った妊婦の群は、増改築をしなかった妊婦の群に比べて、生まれた子どもの喘鳴発症のリスクが上昇していました(既往あり群 1.18倍、既往なし群 1.51倍)。一方で、妊娠中に自宅を新築した妊婦と生まれた子どもの喘鳴との関係は、層別化解析でも関連はみられませんでした。

 

今回の検討の結果から、妊娠中に増改築した妊婦から生まれた子どもは、そうでない妊婦から生まれた子どもと比較して、1歳までの喘鳴と反復性喘鳴の頻度が高いことが観察されました。また、妊娠中に増改築した妊婦から生まれた子どもは、そうでない妊婦から生まれた子どもと比較して、妊婦のアレルギー疾患の既往や生まれた子どもの呼吸器感染症の既往という、これまでに知られている喘鳴のリスク因子の有無に関わらず喘鳴の頻度が高くなっていました。


※1 共変量:結果に影響をあたえる因子
※2 ロジスティック回帰分析:複数の要因が関連する場合に特定の事象が起こる確率を検討するための統計手法



今後の展開

今後は、妊娠中に増改築を行ったことと生まれた子どもの1歳以降の喘息との関連を検討していくことで、妊娠中に増改築を行うことが生まれた子どもの乳児期の喘鳴だけでなく喘息の発症にも関係していくかが判明する可能性があると考えています。また、妊娠中に増改築を行うことが生まれた子どもの喘鳴に影響を与える機序や、新築と増改築でなぜ異なる結果となったかなどについて、さらなる研究が必要です。


エコチル調査からは引き続き、子どもの発育や健康に影響を与える化学物質等の環境要因を明らかとなることが期待されます。


本研究の限界としては、増改築や喘鳴の有無は質問票への回答によって評価したものであり、増改築の種類や程度、喘鳴の重症度は明らかでないこと、また、妊娠中の増改築と生まれた子どもの乳児期の喘鳴との関連の機序が不明であることなどがあげられます。

研究に関するお問い合わせ先


兵庫医科大学 エコチル調査兵庫ユニットセンター
センター長 島 正之

TEL:0798-45-6636
E-mail:mail_eco.png

本リリースに関するお問い合わせ先


学校法人兵庫医科大学 総務部 広報課

TEL:0798-45-6655(直通)
FAX:0798-45-6219
E-mail:m.png

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