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~ 近代外科に残された難病・術後癒着障害に、新治療の光 ~「手術後癒着」の分子機構を解明

2019年12月10日

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藤元 治朗
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宇山 直樹


兵庫医科大学 (兵庫県西宮市、学長・野口 光一) 外科学 肝・胆・膵外科 特別招聘教授の藤元 治朗、非常勤講師の宇山 直樹らの研究グループが、「手術後癒着(以下、癒着)」に関する分子機構を解明しました。すべての臓器・腹膜を覆う中皮細胞が線維形成の原因であり、インターロイキン6(以下IL-6)を中心とする分子機構を発見したのは世界で初めてです。本研究はこれまでに本学における癒着研究の第一報(Nature Medicine, 2008)のあと継続してきた研究であり、癒着形成の分子機構を解明したことで予防法の可能性が示されました。


「癒着」とは、外科手術を受けた後に、腹膜とほかの内臓臓器、または腸管を中心とする臓器同士がべったりとくっついてしまう現象を指します。腸閉塞、頑固な腹痛、不妊などの癒着合併症を併発し、患者さんに長く辛い苦痛を与える現象ですが、これまで発生機序が明らかにされていませんでした。また、手術を行う外科医にとっても、癒着があることで手術の難易度が上がり臓器損傷や癌の根治術が困難となって「手術時間が長くなる」という大きなデメリットや、癒着関連医療費が米国統計で1,560億円/年(米国NCD統計)と、医療経済的にも大問題でありました。

今回、発生機序を解明したことにより、癒着を事前に防ぐ治療薬の発見(具体的には抗IL-6受容体抗体)やそれ以外の新たな治療薬開発につながり、近代外科に課せられていた難病の術後癒着の予防の可能性がひらけてきました。




本研究成果に関する論文は、2019年11月27日(水)19:00(日本時間)に、著名な国際科学雑誌Natureグループの「Scientific Reports誌」の電子版に掲載されました。

【論文掲載情報】

  • 掲載雑誌
    Scientific Reports」(26th, November, 2019)電子版
  • 論文タイトル
    「Anti-interleukin-6 receptor antibody treatment ameliorates postoperative adhesion formation」
  • 著者
    Naoki Uyama, Hiroko Tsutsui, Songtao Wu, Koubun Yasuda, Etsuro Hatano, Xian-Yang Qin, Soichi Kojima, & Jiro Fujimoto
    ※ 兵庫医科大学

研究概要

現在、日本では年間約200万人が全身麻酔手術を受けており、毎年約120万人の癒着患者が発症していると推定されます。外科手術は急速な発展を遂げ、臓器移植・拡大手術から低侵襲の内視鏡手術に至るまであらゆる術式を選択することが可能となりました。しかし、手術後の癒着形成は、腹部では67~93%の高発症率が報告され、腸閉塞・腹痛・妊娠など、癒着合併症が起きると患者さんにとって大きな苦しみとなります。また、医療費面でも大きな負担となっています。(米国:1560億円/年、日本:718億円/年)


この手術後癒着の分子機構を解明し、治療法を模索するために研究に取り組み、初期段階として、手術侵襲部位でフィブリンが形成、沈着して癒着のきっかけとなることを2008年4月に「Nature Medicine」誌で発表しました。その継続・発展研究として、フィブリン沈着以降の機序を解明したのが本研究になります。


今回の研究成果としては特に、「腹膜中皮細胞がインターロイキン6(IL-6)を生み出していること」「IL-6により好中球がTNF-αおよびTGF-βを産生すること」「TGF-βにより中皮細胞自身が線維を産生、癒着形成の本体であること」の発見に非常に意義があります。これらを発見したことで、IL-6をターゲットとした薬(具体的には抗IL-6受容体抗体)の有用性を確認でき、今後実際の臨床で治療に役立てることの可能性が示されました。また、現在、付随研究として非侵襲的癒着診断技術(超音波動体追跡ベクトル法)およびIL-6下流シグナル分子制御法の開発も進行中です。


※ 出典:米国:Schnuriger, B et.al. Am J Surg 201; 111-121, 2011, 
     日本:兵庫医科大学病院統計と厚労省全身麻酔件数統計より試算


中皮細胞-好中球 相互作用図

要約


研究費の出処

  • 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(2014年~2018年、199,200千円):代表 藤元 治朗
  • 科学研究費補助金 基盤研究B(2010年~2012年、18,980千円):代表 藤元 治朗
  • 科学研究費補助金 基盤研究B(2013年~2015年、17,940千円):代表 藤元 治朗
  • 科学研究費補助金 基盤研究B(2018年~2020年、17,420千円):代表 藤元 治朗

特許権等知的財産取得申請状況

  1. 特許第5530635:「腸管癒着抑制剤」、2014年6月25日特許発行
  2. 出願番号 2017-203271:「抗IL-6受容体抗体を含有する術後の癒着を抑制するための医薬組成物」、
    2017年10月20日特許出願
  3. 出願番号 2017-220280:「解析装置および解析プログラム」、2017年11月15日特許出願

本リリースに関するお問い合わせ先


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FAX:0798-45-6219
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