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~悪性中皮腫 遺伝子研究~ 予後の良い人を見つける指標を発見

兵庫医科大学(兵庫県西宮市、学長・野口光一) 遺伝学講座 吉川 良恵講師らと、ハワイ大学がんセンター S. Pastorino助教・M. Carbone教授・江見 充客員教授、ニューヨーク大学HI. Pass教授らの研究グループは、分子遺伝学により、予後の良い悪性中皮腫患者を識別する指標を発見しました。

悪性中皮腫は、診断を受けてから1年以上生存することが難しいと言われる非常に予後が悪い腫瘍ですが、一方で10年以上生存される患者さんも一定数います。本研究の結果より、50歳未満で悪性中皮腫を発症、または患者さんご本人もしくはご家族に複数の腫瘍発症歴がある方は、比較的予後が良い可能性が高いということが分かりました。また、これらの患者さんは、アスベストの曝露による発症ではなく、がん関連遺伝子の変異による発症の可能性が高いことも判明しています。

本研究成果に関する論文は、日本時間 10月31日(水)午前6時 (米国東部標準時 10月30日(火)午後4時)に、国際科学雑誌 「Journal of Clinical Oncology」の電子版に掲載されました。

論文情報


■掲載誌
「Journal of Clinical Oncology」 30th, October, 2018 電子版

■論文タイトル
「A Subset of Mesotheliomas With Improved Survival Occurring in Carriers of BAP1 and Other Germline Mutations」

■著者
吉川 良恵、Sandra Pastorino、Harvey I. Pass、江見 充、玉置 知子、大村谷 昌樹、Haining Yang、Michelle Carbone 等

掲載日:2018年10月30日(米国東部標準時)
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研究の背景 悪性中皮腫の主要因はアスベスト曝露ですが、曝露歴を有する人の内ごく一部が発症します。ハワイ大学がんセンターCarbone教授らが、家族性に悪性中皮腫を発症する患者さんがBAP1(がん抑制因子)の遺伝子変異を生まれつき持っているとを見出したことにより、環境がんと考えられてきた悪性中皮腫の発症には遺伝子が寄与することが明らかになりました。しかし、生まれつきBAP1変異を有する患者さんは発症者の数%であり、他にも発症に寄与する遺伝子の存在が予測される点について、世界中の研究者が研究していました。
現在、個々の患者さんに適した医療を提供するパーソナルメディシンが注目されており、悪性中皮腫においても、予後の良い患者さんを見極め、適切な治療を提供したいという願いから、研究を進めています。

研究の手法と
成果
ハワイ大学がんセンター、ニューヨーク大学ランゴーン・メディカルセンターは10年以上にわたり、病歴や家族腫瘍歴を調査した結果、予後の良い患者さんの特徴をつかみました。一方、兵庫医科大学は遺伝子解析調査を担当しました。これまでの悪性中皮腫遺伝子解析の経験から、発症に関連すると思われる遺伝子を抽出した後に、これら遺伝子の全領域を対象とした塩基配列解析パネルを作製し、次世代シーケンサー解析を実施しました。
これら三機関の共同研究により、BAP1遺伝子に生まれつき変異を持つ患者さんは予後が良いことが、明らかになりました。さらに50歳未満で悪性中皮腫を発症、または患者さんご本人、もしくはご家族に複数の腫瘍発症歴があるという条件の何れかに該当する方は、さらに予後が良い確率が高いことも明らかとなりました。予後の良い患者さんは、生まれつきがん関連遺伝子に変異が高い頻度で見つかったことから、家族性腫瘍の一つとして悪性中皮腫を発症していると思われます。これらの患者さんは、診断時にCT撮影は避けたほうが良いなど、個々の患者さんに適した診断・治療の提供に、本研究は有用と考えています。

研究費等の
出処
  • DOD CA150220(Michelle Carbone and Haining Yang)
  • NCI R01 CA198138(Michelle Carbone)
  • the University of Hawai’I Foundation(Michelle Carbone)
  • the EDRN NCI 5U01CA111295-08(Harvey I. Pass)
  • 科研費26460689(吉川 良恵)、25460710(江見 充)、24590715&15K08658(玉置 知子)
  • 2017年度兵庫医科大学教員助成金(吉川 良恵)

今後の課題 今回の解析対象遺伝子は56遺伝子であり、家族性腫瘍に属すると考えられますが、対象遺伝子に変異が検出されていない患者さんも多いです。悪性中皮腫発症に寄与する遺伝子をさらに探索し、それぞれの遺伝子変異に対応した治療法を提供することが重要であります。
ただ、悪性中皮腫発症者の多くは、アスベスト曝露による予後の悪い患者さんが多数を占めるため、遺伝子解析により腫瘍発症・悪性化に寄与が高い遺伝子を見出し、該遺伝子の変異をターゲットとする分子標的薬開発につなげることが課題です。

論文著者 Pastorino S*, Yoshikawa Y*, Pass HI*, Emi M, Nasu M, Pagano I, Takinishi Y, Yamamoto R, Minaai M, Tamaoki-Hashimoto T, Ohmuraya M, Goto K, Goparaju C,Sarin KY, Tanji M, Bononi A, Napolitano A, Gaudino G, Hesdorffer M, Yang H#, Carbone M#.

* Equally contributed; # co-corresponding authors


  • University of Hawaii Cancer Center, Honolulu, HI, USA(Thoracic Oncology)
    Sandra Pastorino, Mitsuru Emi, Masaki Nasu, Yasutaka Takinishi, Ryuji Yamamoto, Michael Minaai, Keisuke Goto, Ian Pagano, Mika Tanji, Angela Bononi, Andrea Napolitano, Giovanni Gaudino, Haining Yang, Michele Carbone
  • Hyogo College of Medicine, Hyogo, Japan(Department of Genetics)
    Yoshie Yoshikawa, Mitsuru Emi, Tomoko Hashimoto-Tamaoki, Masaki Ohmuraya
  • Mesothelioma Applied Research Foundation, Washington DC, USA
    Mary Hesdorffer
  • New York University Langone Medical Center, New York, USA
    Chandra Goparaju, Harvey I. Pass:
  • Stanford University, Stanford, CA USA(Department of Dermatology)
    Kavita Sarin:


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